独り立ちのとき


「近くに巣があるのかな? 朝から同じところで声がしているでしょう?」

いつものようにテラスで朝食をとりながらバードウォッチングしていた私達、
6月半ばにもなると縄張りを主張する小鳥たちのさえずりも少なくなって、今朝は ほぼ同じ場所から聞こえてくるアカゲラの小さな声が気になった。

「あっ、近くの木に飛んできたけれど、アレかな? 」




「わっ、お腹の羽、なんかきちゃないぞ〜。こどもかな? 」




「 アカゲラのヒナね、かわいい〜!」

今までシジュウカラ、ゴジュウカラ、モズなどのヒナは見たことがあるが、アカゲラは初めてだ。

動物の子供たちに共通しているあどけない表情・・・




その目は必死に上を見つめ、辺りを見渡しながらもう長い間 鳴き続けている。

「親鳥がやってくるかもしれないね。」

しばらく観察していたが、親鳥が来る気配はない。

でもたまに一点を見つめて盛んに鳴いたり、飛ぶ黒い影を追って移動したり、
きっと親鳥は近くで見守っているのだろう。

「アカゲラのお母さん、ちょっとだけでいいから来てあげて!」
心の中でそう願ってみても、親鳥はやって来ない。

ここで甘やかせばこのヒナが自立できず、自然界で生きていけないことを親鳥は知っているのだろう。

生き物の世界はきびしい。


その後も私たちが夕方に小屋を離れるまで、ずっと親を呼ぶヒナの声が聞こえていた。

今日一日何も食べていないかも?

ガンバレ!! はやく独り立ち してね。

( ちょっと心がキュ〜ンとなるようなその声と表情をこちらでどうぞ )





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