共存の難しさ・・・ハチ


裏庭では四季折々いろんな野草の花が咲き、蜜や花粉を求めてハチやアブなど多くの虫たちがやってくる。




花から花へと飛び交うその姿は、見ているととても愛らしい。


でも、「ハチが巣を作った」となると話は別である。




8月、お盆休みに庭の草刈をしていた時のこと・・・

彼は庭にあるヒメコブシの木にハチが巣を作っていることに気がつかず、根元の草を刈ろうとして手を伸ばした際、巣を守ろうとしたハチに刺された。

アシナガバチの一種のようだ。

すぐに消毒をしたものの、翌日には手がパンパンに腫上がり、数日間痛みが持続した。

この時期、巣作り&子育て中のハチは活動的で、危険を感じると刺される可能性が大きい。

しかし私達はできるだけ生き物を殺したくないので、ハチの巣はそのままキープしておくことに。

「ヒメコブシの木に近づかないようにさえすれば、大丈夫だよ。」


しかし、それが「スズメバチの巣」となると別の話である。




8月初め、バルコニー屋根にま〜るい巣を見つけた。

スズメバチの巣である。

自然豊かなエリアなので、「家にハチが巣を作った」というのはご近所の人達から 時々聞く話である。

「いつの間に 作ったのかな?」

見ていると、ハチが数匹巣の拡張工事に励んでいる。

「まあ、上のほうだから 大丈夫だよ」

しばらくようすをみることにしたが、1ヶ月後にはかなり大きくなって飛び交うハチの数も増えていた。

秋は黄葉・行楽シーズン、小屋にやって来る友人たちも多くなる季節である。
彼らにもしものことがあってはいけない。

それに他のハチと違って、「スズメバチの巣」と思うだけでなんとなく落ち着かないのも事実だ。

ということで、スズメバチの巣を撤去することにした。


「ハチの巣撤去作業は、夜ハチが活動しないときにする」

ご近所のTさんから教えていただいた地元の人達のアドバイスに従い、夜暗くなってから彼は巣の外にハチがいないことを確認し、高い場所にある巣に直接スプレー薬剤が届くようにバルコニーに脚立を設置した。

「気をつけてね、無理は しないでよ。」
やさしい言葉をかけつつも、安全な室内で怖々見ている根性ナシの私である。

一方、彼は冬の厚手ジャンパーを着込み、帽子に厚手ゴム手袋をし、薬剤のスプレー缶を手にして勇ましく脚立を上がっていく。

巣から約1mのところまで精一杯手を伸ばし、シュッ!シューーーーッ!
スズメバチ専用の薬剤がものすごい勢いで噴射され、あたり一面噴煙が舞う。

巣からスズメバチが2〜3匹飛び出したが、すぐにポトリと落下。
さすがスズメバチ専用だけあって、約30秒の噴射で奇襲作戦終了!




翌朝、明るくなってから巣を撤去。
測ってみると直径約20cmもあった。

これ以上大きくなっていたら素人による撤去は難しかっただろう。

でも 昨夜 薬剤をスプレーした際に巣から出てきたハチは ほんの数匹だった。
他のハチたちはどうしたのだろうか?

巣に出入りするハチがいないことを確認し、巣を解体してみた。




中は三層になっていて、ハニカム構造で守られた部屋にはハチの子たちも・・・
そのまわりには戦士たちの変わり果てた姿。




「ハチの巣を撤去する」ということは、たくさんの命を奪うこと・・・

当たりまえのことかもしれないけれど、改めて殺生をしたことを認識。

後でネットで調べたら、「冬になると女王蜂以外はみんな死んで、巣はカラになる」とあった。

冬になるまで無事にやり過ごせば、後は空き家になって同じ巣が使われることはないらしい。

巣を作ったのがバルコニーでなかったら、私達が普段通るような場所でなかったら、世間であんなに「スズメバチは獰猛」「スズメバチの巣は危険」と報道していなかったら、私たちが彼らを殺すこともなかったのかもしれない。

今後またスズメバチが巣を作ったときどうすればいいのか、きっとその度に悩むことだろう・・・

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