庭を散歩するタヌキ


梅雨真っ只中の7月第1土曜日
彼は山へ出かけて留守なので、私一人テラスで静かに朝食をとっていた。

ふと見ると、何か茶色い塊が庭の向こうから小屋に向かってトコトコ動いている。

1ヶ月程前のことだが、裏庭をのんびり横切る茶色い猫を彼が見つけた。
「どこの猫かな?こんなところまで散歩してくるんだなぁ。」

「あのときの猫かな?証拠写真を撮っておこう!」
カメラを取り行くこちらの動きを感じたらしく、茶色い塊が動きを止めた。

「あれ?毛色があの猫より濃い?猫じゃない!」




向こうを見下ろす目と、こちらを見上げる目が合う。



タ ヌ キ ・・・


お互いに「何もしないからね」と静かにアイコンタクトを交わした後、茶色い塊は ゆっくり方向転換して、またトコトコと森に帰って行った。

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