かわいい訪問者・・・リス


「リスが来ているよ」

キッチンで朝食の後片付けをしていた私に 彼が声をかけた。

「どこ?」
「あの松の木」
「え〜?」
「肉眼じゃ 絶対に見つけられないような所」

朝食後、彼はテラスから庭の餌台にやって来る鳥たちを眺めていたのだが、たまたま動くリスの影を見つけたようだった。






私がリスを見ようとテラスに出た時は、すでに人の気配を察して松の木の小枝が重なりあった隙間に小さく身を縮めて隠れていた。




「もっと見えるところに出てきてくれないかな〜」
「リスだって、こちらの様子を見て必死に隠れているんだから無理ネ」

小さくなってじっと動かない木陰のリスくんと、フィールドスコープを覗く彼との 根競べが始まった。




時々体勢を変えるものの、その場所からは動く気配がない。

「もう一時間も見ているけれど、ちっとも動かないよ。」
「一時間も? かわいそうね、そろそろ開放してあげたら?」
「うん、そうするよ」

そう言って、彼はテラスから離れた。

しばらくしてリスのいた所を見てみたら、すでにその姿はなかった。
人間の視線から解放されて、どこかへ行ったのだろう。

夕方、同じ松の木で動く影・・・、リスだ。




フィールドスコープで観察しようとする私達を残し、リスは森の奥へと消えていった。

「ずっとここにいたのかな?」
「本当は餌台のヒマワリが食べたかったのかもね」

リスく〜ん、ヒマワリの種をいっぱい置いておくから、また来てね〜。

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