遠い記憶を呼び起こす「ワラビ」



初夏に向かう裏庭で採れるワラビは、とても太くてやわらかい。
ただ、今年はなぜか少し細くてかためのようだ。

そんなワラビを一掴みだけ大地から分けてもらう。




子供の頃、京都に住んでいた祖父の家で初夏にワラビを摘むのが楽しみだった。

摘んだ生のワラビは木灰とともにお土産としてもらい、家で母がアク抜きし、家族みんなマヨネーズをつけて食べるのが好きだった。

でも祖父の他界後、生ワラビや木灰の入手は難しくなった。

大人になってから思い出の味が恋しくて、売っていたワラビを 重曹でアク抜きしたり、塩漬けワラビを買ったりしたが、求める味にはほど遠く、あの懐かしいワラビに出会えることは あきらめていた。

そんな遠い記憶のワラビに裏庭で再会。
だからどんなにたくさん生えていても採るのは数日で食べきれる分だけ、塩漬け保存はしない。

裏庭で採った一掴みのワラビを大きな鍋に入れて薪ストーブの灰をふりかけ、熱湯をそそいで一晩おく。

そして翌朝のモーニングプレートに。




マヨネーズ&醤油でいただくワラビは、ほのかな苦味と香りとぬめりが思い出の味そのまま。

だから、塩漬けにしたり煮物や炒め物にはしたくない。
遠い昔の楽しかった味をそのまま記憶に留めておくために・・・



[ 2015.05.24 ]

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